「今日のリハビリは自転車に乗ってみましょうか。」
理学療法担当の眼光ニキから提案があった。
以前から眼光ニキには自転車の趣味があることを伝えており、それに配慮いただいた提案である。また車の免許についても取り消しになることはないはずだが、手続きの日程感が不明なため自転車に乗れると非常にありがたい。
「このリハビリ病院に自転車があるんですか?」
「練習用の自転車が1台だけあるんですよ。」と眼光ニキ。
屋外の駐輪場にその自転車を取りに行く。確かにボロボロのママチャリが存在した。僕の趣味はロードバイク(スポーツ自転車)だが、まずママチャリに乗れないことには話にならない。
しかしその日は天気は良いものの、風が強かった。徒歩でも少しふらつくほどの横殴りの風が吹いており、不安感をあおる。
すれ違った他の療法士の先生もドン引きの表情である。
「今日しか、ないんですよ・・・」と眼光ニキ。
言うほど今日しかないか?・・自転車を借りるのが大変なのだろうか?
公道での練習は危険すぎるため、病院のロータリーで乗ることになった。それほど広くはないため、細かく転回する必要があり逆に難しい。
「徒歩と違って、バランスを崩しても支えられないかもしれませんからね。吉田さん頼みますよ。僕のPT(理学療法士)人生がかかってますから。」
そんな大げさな・・・そこまでリスクをしょっていただく必要はないんですが・・
そう考えながらも、僕の中のサディストがむくむくと覚醒してきていた。
(眼光ニキの進退は、僕の手の中か・・悪くない・・)
恐る恐るサドルにまたがり、ペダルに足を乗せてみる。不自由な右足を置くのにやや手間取る。
一瞬、ロードバイクに乗っている最中に脳梗塞を発症したあの夜が頭をよぎり、身体をこわばらせる。
悪いイメージを振り払い、ペダルに体重を乗せた。久しぶりの視界が流れるスピード、冷たい風が顔を刺す。
「眼光ニキィ~! 乗れたよお~!!」
「健康ぉ~!! やったじゃん~!! 乗れるじゃん~!!」
2月の強い風に吹かれながら、喜び合った。
「では、8の字走行から不自由な右足での着地をやってみましょう。」
やはり眼光ニキの方がサディストだった。
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