徒然草ァ!!

リハビリ随筆

僕が優勝する物語の第一話

リトルワールドサイクルミーティング

2024年10月6日、愛知県にある野外民族博物館「リトルワールド」の外周をコースにしたロードバイク(スポーツ自転車)の草レースが行われた。

一年ほど前からダイエットを兼ねたトレーニングとして自転車を取り入れていたが、継続のモチベーションとしてレースに出てみようと思い立ち、このレースにエントリーしてみた。

カテゴリーとしては「ビギナー」「スポーツ」「エキスパート」の3つ。もちろん「ビギナー」にエントリー。

前日に降ったと思われる雨のせいで路面は濡れ、不安と期待が入り混じる気持ちの中スタートを待つ。ビギナークラスには約30名ほどエントリーしており続々とスタートラインに集合する。

もともと上位は目指すものの現実的にはせいぜい中盤の順位になるのではないかとイメージしていた。だがスタートラインに並んだライバルたちをチェックした際にその目論見は早くも崩れ去る。

皆ムッキムキである。

そしてピッチピチのウェアを着ている。

ムッキムキ×ピッチピチで早くも僕の戦意が削がれる。

「ビギナークラスとは・・・?」

スタートの合図とともに集団が動き出す。ビギナークラスは2.5kmの外周コースを3周、計7.5kmで争われる。

想像以上にアップダウンがあり、上りがハードに感じるがなんとか集団に食らいつく。ただそれも1週目までである。2週目の上りで早くも僕の心は折れ、ジリジリと集団から離されていく。3周目では前走者の姿が視界から消え、完全な一人旅の様相となった。

圧倒的最下位。

ぐうの音も出ないほどの結果だったが意外にも僕の心は前を向いていた。

 

「これは、僕が優勝する物語の第一話だ・・・」

 

僕が優勝する物語の第二話

次回のレースの開催は12月1日。計画的にトレーニングを重ね、着実に準備を進めたい。何しろ前回は最下位。右肩上がりしかありえない結果である。

10月にしては蒸し暑い夜、お決まりの1時間程度のトレーニングコースに繰り出す。レースの疲れも抜け快調に自転車を飛ばす。

コースを70%ほど消化した時点でタイムを計るスマホはベストを記録していた。

「よしよし、次回のレースではせめて集団内に入りたいぜ!」

短い上りをスピードを落とさぬよう立漕ぎでクリアする。ヘルメットから汗がしたたり落ちる。

次の瞬間、自転車が蛇行を始めた。

前輪が道路わきの轍にとられることはしばしばある。ただその場合はすぐに状態が復帰するものだ。

しかし今回の蛇行はどんどんひどくなる。時間にして1~2秒ほどだと思われるが高速で頭が回転する。

"バランス!" ”無理!” ”落車!” ”歩道側!” ”受け身!”

歩道側に倒れこんだ僕はわけもわからず立ち上がろうとしたが、重力が3倍ほどに感じてほとんど体を動かすことができなかった。

体感ではかなり長く感じたが、恐らく数分のうちに通りがかりのドライバーの方が救急車を呼んでくれ、救急病院に搬送された。

ストレッチャーに乗せられて流れる視界の中には、そこには無いはずの右手が虚空をつかんでいた。

脳梗塞、右半身不随です」

意識だけは鮮明にあった僕に医者が宣言する。

 

「これは、僕が優勝する物語の第二話・・・か?・・・」

 

優勝するまでに何話必要なのであろうか?構想が壮大すぎて、少年ジャンプなら10週で打ち切りになるパターンである。

 

次回、「シビンは夢のかなたに!」ぜってえ読んでくれよな!